テキストサイズ

続・あなたの色に染められて

第3章 知らない過去


いまいち状況がつかめていない璃子はポカンと口を開け大きな目をパチパチとさせ 俺の胸に頬を埋めていた。

『ヨシヨシ…。』

俺はそんな璃子が可愛くて仔犬をあやすように髪に頬を擦り付けて ギュッと抱きしめた体を左右に振って

『すっきりしたか?』

『…。』

少しは状況が飲めてきたのかな。

開いていた口を少しだけ尖らせ 俺の胸に体を預け始めていたから

『沙希はねぇな…うん ないな。』

まさか 沙希に妬いていたなんてな。

『ガキの頃から知ってるアイツと色恋なんて考えらんねぇっつうの。』

『…でも。』

やっと口を開いたと思ったら今度は眉をハの字に下げて

『私…面倒くさいんでしょ?』

ホント 可愛いったらありゃしない。

『面倒くさくていいの。…つか 言いたいことは言えって。俺たち夫婦だろ?』

髪を撫でていた手を頬に添えて顔を上げさせるとまだ何か言いたげなその表情

『でも…京介さんは風間くんのこと知ってたのに言わなかったです。』

一丁前に俺を睨みながらやっと心を開いたコイツはホントに面倒くせぇ可愛い俺の嫁さんだった。



『どうせ 残った仕事でも片付けてたんだろ?で、気が利く風間が差し入れしたってところだろ。』

ヒートアップしてる私とは対照的にこの調子で穏やかにずっと微笑む京介さん。

…してやられた…というか

まんまと引っ掛かったっていうのか

ここ最近ずっと抱えていた心のモヤモヤを“挑発”という戦法を使って意図も簡単に吐露させられて

『すげぇ胸くそ悪かったけどな。でも まぁ仕事だし…おまえのこと信用してるし?』

ものすごいヤキモチ妬きなのに ちゃんと仕事とプライベートは分別できてる私のダンナ様

それなのに私は公私混同もいいところ

『…ごめんなさぃ。』

『いや 俺もちゃんと話せばよかったんだよな。実はさ 和希が野球チームに入ったんだけど みんなより後から入ったから下手くそなんだって中庭で悄気ててさ。だったらケンタと一緒に出来ねぇかなって。ほらアイツも最近始めたろ?だから…悪かったな。』

ちゃんと理由を聞けばよかったんだ。

彼の腕のなかはいつだって私の大切な場所。

背中に手を廻してそのぬくもりに身を任せると 彼は私の顔を覗き込んで意味深に微笑み

『じゃあ璃子さん。お言葉に甘えて抱いてもらおうかな?』

私を膝の上に跨がせた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ