続・あなたの色に染められて
第3章 知らない過去
私が彼を愛していたはずなのに 彼の腕の中で淫れて果てた私
微睡みのなかをさ迷う私はまた彼の厚い胸板に頬を埋めて
『どうしたんですか?急に…。』
『たまにはこういう日もあるの。』
さっきまであんなに激しかったのに私の横で肩肘をつきながら髪を撫でる彼は息ひとつ切れていない。
『ねぇ京介さん。私ってやっぱり…あの…下手ですよね?』
だって ここに連れてこられたのはそれ以外考えられない。
どこまで愛すればいいのかわからない私はいつも奥に挿し込み過ぎてしまって嘔吐いてしまうから
『下手って言うか…。嬉しいけど無理はダメ。俺はその気持ちだけで充分だから。』
額に落とされるキスの温度で 彼の優しさが伝わる。
『っていうのは格好つけすぎか…。俺に襲いかかるときってさ…だいたい璃子を泣かせてるときなんだよ。』
『…。』
『だから 嬉しいけどすげぇ不安になる。また 泣かせてんだなぁって…不甲斐ねぇなぁって。』
京介さんも私の心の変化を気付いてくれてたんだ。
『だから…やらなくていい。』
『でも…たまには私も…。』
『愛したいときがあるんだっけな。』
髪を撫でていた手が頬に添えられ 唇が重なる。
甘くて気持ちいい彼のキス。そんな彼のキスに酔いしれて私も彼の頬に手を添えると今度は京介さんが私に質問をする。
『で 沙希の何に妬いたの?』
鼻先が当たり 唇が微かに触れる距離で私に柔らかなぬくもりを届けながら
『原因は和希だけじゃないだろ?』
いつから京介さんは私の心を見透かすようになったんだろう
『教えてよ…可愛い奥さん。』
ゆっくりと覆い被さりながら 戸惑う私の頬に顎に耳朶に彼の唇が降りてくる。
『ほら 早く言わないとおまえを愛せない。』
汗の引いた彼の肌の感触がやっと冷めた私の内側にまた熱を灯しはじめる。
『笑わない?』
『笑わないよ。』
彼の大きな手が腰のラインをなぞったら
『…過去。』
『過去?』
『うん…沙希さんが知ってて私が知らない過去。』
ほらね…射抜くような視線が一瞬で目尻を下げて
『プッ…バーカ。』
『笑わないって言ったのに。』
京介さんは私をギュッと抱きしめて リップ音を響かせながら何度も頬に口づける。
『いやいや 笑ってない。』
『笑ってる!』
尖らせた私の唇にも笑いながらキスをした。