続・あなたの色に染められて
第4章 夏祭り
『璃子ちゃん。もうすぐ花火の時間だよ?』
『もうそんな時間?』
今日も手伝いに来てくれた風間くんと駅前の大きな時計に目をやるとアナウンスが流れ始めた。
「このあと 20時より○○公園から花火が上がります。ぜひ皆様ご観覧くださいませ。」
昨晩 片付けを終えたあと 京介さんは祭りの実行委員の方たちに誘われて飲みに行き 帰ってきたのは午前様。
朝も ろくに話も出来ないまま 私は本部に向かうため先に家を出た。
『ここから見えるかな。』
テントから身を乗り出してメインストリートを覗くと
『ビルに少し隠れるけど見えるわよ。』
うちわを配る婦人会のお姉さまが教えてくれた。
『今日は揃いの浴衣じゃないんだね。』
『うん。汗かいちゃったから…それに酒蔵の浴衣を着て宣伝もしなくちゃね。』
昨日と正反対な濃紺地に酒蔵の家紋が入った浴衣を羽織って参加する最終日。
花火が上がるからかな…昨日よりも来場者の人数は多くて
『Excuse me.』
『はいはーい。』
京介さんに連絡を取る暇もなかった。
ひっきりなしに花火会場やよく見える場所を訪ねられ その都度丁寧に受け答える。
祭りの賑わいが最高潮に達したそのとき
ドーン!
身を乗り出せば夜空に真っ赤な大輪の華
『すげぇ迫力。』
『ホント 綺麗だね。』
少し隠れてしまっているけど夜空を鮮やかに彩って
ドーン!ドドーン!
花火を上げる場所が近いせいなのか 体にズシリと波動が伝わる感じがして
『あっ 俺この色の付いてない花火好き。』
『私も 赤や緑も素敵だけど 黄金一色が花火の儚さにピッタリな気がして。』
花火が始まってしまえば案内所は閑古鳥が泣く。
みんな揃ってテントを出てメインストリートのポッカリ空いた空を見上げて
『すごいね。』
『すごいな。』
この街のお祭りのクライマックスを飾るには申し分ないほどの打ち上げ数と華やかさ
『夏も半分過ぎたか。』
『そうね。あと半分だね。』
並んでしみじみと夏の夜空を見上げる私たち
打ち上げの音が大きければ大きいほど夜空を華やかに染め上げて
京介さんの見てる場所からはちゃんと花火が見えてるかな。
同じ空を見上げて同じ花火を見る。
寂しいけど…寂しくないよね?
『京介さん。』
無意識に愛しい人の名前を呟いた。