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続・あなたの色に染められて

第4章 夏祭り


やっぱり一緒に見たかったな…なんて 大人げない私は彼を想いながら空を見上げていた。

花火はとても綺麗だけど輝くと一瞬で消えてしまう儚いもの

本当なら手を繋いでこの空を眺めていたはずなのに…

…ダメだなぁ…私って

繋ぐことのない手をギュッと握ると

『ハァハァ…間に合ったぁ。』

『京介さん!』

息を切らしながら私の肩を抱き寄せる愛しい人。

『どうしたの?』

『和希と少し見て…ハァハァ ダッシュしてきた。』

うちわでパタパタと扇ぎながら首から下げた手拭いで汗を拭いながら

『クライマックスのデカイ花火はおまえと一緒に見るって決めてたから。』

浴衣の袖を肩まで捲りあげてニカッと笑って

『おまえ絶対に口開けて見るだろ?その顔だけはどうしても見たくって。』

嬉しかった…動きづらい浴衣に雪駄を履いて私のためにこんなに汗を流して

『おっ そろそろクライマックスか?』

京介さんが指を指した夜空が鮮やかに染まりだすと 私の肩から腕を下ろして掬い上げるように手を繋いでくれた。

その気持ちがすごく嬉しくて私は繋いだ手に自然と指絡める。

『ククッ もう口開けた。』

『私はいいですから ちゃんと花火見てください!』

ラストの大きな花火を見るために京介さんはわざわざこの距離を走ってきてくれたんだ。

『ほら来たぞ!』

ヒュ~ ドーーン!!

『わぁ。』

夜空いっぱいに大輪の華を咲かせると まるで星の欠片が空から降り注ぐように流れ落ちてくる。

絡めた指を同じタイミングで握ると 星屑はチラチラと瞬きながら夜空に消えていった。


***


頭のてっぺんに大きなお団子を結って少し欠けた花火を見上げるキミはこんなに近くにいるのにとても遠い存在だった。

『風間くん見て!あれお魚じゃない?次はニコちゃん!』

無邪気にはしゃいで見せるけど 本当は寂しくて堪らないんだよな。

キミはいつもそうだ 我慢ばかりしている。

それでもキミはいつも笑顔を絶やさず 健気に振る舞って

大輪の華が咲く夜空を一人儚げに見上げ 見つめているから

今すぐにでもこの腕の中に閉じ込めたいと手を伸ばしたくなる

荒い息づかいと共に現れたキミがずっと待っていた愛しい人

肩を抱き寄せられれば ボクには見せないそのとびきりの笑顔を愛しい人に向けるんだ

…好きになっちゃいけない人なんだ

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