続・あなたの色に染められて
第5章 サマーバカンス
『まぁ それなりに…。』
真っ昼間、ご婦人方で賑わう人気のイタリアンのお店で
『避妊はしてないんですよね?』
『へ!?』
夜のお話を 両手で頬杖をついて真顔で尋ねてくる萌ちゃん。
『萌ちゃん ちょっとボリューム下げて。』
え…そこですか?幸乃さん?
よく見れば幸乃さんも美紀も頬杖ついて興味津々なわけで
『璃子ちゃんは欲しいんでしょ?』
『まぁ…。』
『で、避妊は?』
母は強しというのか みんな恥ずかし気もなく私の瞳を覗きこんで
『…してません。』
『週にどのぐらい?』
『しゅ…週に?』
上級者の皆様は運ばれてきたサラダをフォークでつつきながら まるで世間話をするかのように平然と私に質問してくる。
『いや…その…。』
『赤ちゃん欲しいんでしょ?恥ずかしがってる場合じゃないよ。』
こんなとき 決まって幸乃さんは男前になる。
『まぁ 璃子を愛してやまない京介さんのことだから週4~5ってとこじゃない?』
…当たってる!
『まぁ…。』
『それでダメなのか…。』
ナースの美紀は腕を組んで私をグッと見据えると
『あんたさ 生理ちゃんと来るほう?それとも乱れるほう?』
美紀の問診が始まった。
『そう言えば 毎回決まってはいないかも。』
手帳に何となく印を付けておくんだけど 毎回決まった周期って訳じゃない。
『これ…こんな感じ。』
私はバックから手帳を取り出してテーブルの中央に置くと みんなマジマジと眺めて
『基礎体温つけてる?』
『基礎体温ですか?』
聞いたことはあるけど実践はしていない。
『毎朝 計ってみたら?』
『毎朝…。』
自分の手帳を捲ると確かに不規則な周期だと実感する。
『子作りだけじゃなくて 自分の体のバローメーターだと思ってつけてごらんよ。』
美紀は私の肩にポンと手を置くと優しい眼差しで微笑む先輩ママたち
『基礎体温ね…。』
私の胸にはいつの間にか また眠りについてしまった美紀の可愛い愛息子のまーくん
『っていうか!うちの別荘で子作り頑張って下さいよ!』
『だから!声 大きいって。』
男前な幸乃さんは隣に座る萌ちゃんの唇に人差し指を当てると とても柔らかな表情で
『璃子ちゃん…子供ができるって奇跡なんだよ?』
『奇跡…。』
『そう 奇跡なの。』
幸乃さんは優しく微笑んだ。