続・あなたの色に染められて
第5章 サマーバカンス
『奇跡はそんなに滅多に起きるものじゃないでしょ?』
『そうですよ。必ず二人のもとに天使が舞い降りますから。』
直也さんと美紀の天使を胸に抱く私は少し気負いすぎていたのかもしれない。
『ほら泣かないで?』
いつの間にか涙を流していた私はまだまだ子供。
こんなだから天使も舞い降りて来てくれないのかな…。
『私…頑張ります。ちゃんとみんなみたいな素敵なママになれるように…。』
メインのパスタが運ばれてくるとまだメソメソしている私をみんなクスクスと笑いながら眺めていた。
『でもさ 忘れてたな。』
『そうだよね…毎日毎日 髪振り乱して追いかけて 同じことを何回も言って。』
『欲しくて授かったのにね。』
『璃子さん!妊活楽しんでくださいね。萌なんか 楽しむ間もなく授かって 悩んで産んだんですから。』
みんなの優しさが嬉しくて ただ頷くことしか出来なかった。
***
久しぶりな贅沢なランチをいただいたあと 通りかかったのは水着売場。
『萌は今年はビキニ無理かなぁ。』
萌ちゃんはまだ体型が戻りきっていない様子で 水着を羨ましそうに眺め
『璃子は?水着どうするの?』
『う~ん。アメリカで何枚か買ったからそれ着ようかなって。』
日本の水着はセールでもお値段が張る。向こうならこの値段で2~3着買えてしまうもの。
『わぁ 可愛い!安くなってるからチーに買ってあげよう。』
幸乃さんはしっかりママ。しっかり値札をチェックしてから選びます。
『そう言えば…皆さんに言うの忘れてましたけど 人数増えましたから。』
真っ白なフリルで飾られたビキニを体に当てた萌ちゃんが何の気なしに発した言葉
『誰誘ったの?』
『沙希さんたちです。』
…え。
『和希くんをどこにも連れてってあげられないって言ってたから。』
その言葉に私の手が止まる。
『そういえば 先週スタンドで育児相談してたね。』
幸乃さんも美紀も苦笑いを浮かべながら戸惑う私を気遣ってくれたけど
『もう確定?』
『はい!スゴく喜んでくれてました。』
溜め息を漏らすのは私の気持ちを知っている幸乃さんと美紀。
大丈夫…大丈夫!
私は二人に伝わるように微笑みながら一人自分に言い聞かせた。
『う~ん、やっぱり買っちゃおうかなぁ。』
やっぱり キミは噂通りの一匹狼の萌ちゃんだった。