続・あなたの色に染められて
第5章 サマーバカンス
『あ~ ヤバイ。オレ酔ったかも。』
俺は立ち上がると璃子の手を握り酔い冷ましと称して海辺にむかった。
『いってらっしゃーい!』
呑気に手を振る嫁さん軍団の前を通り小さな門を潜り抜けると
『いい景色だな。』
少し砂利が混じる砂浜に穏やかな波が打ち寄せる穴場的なビーチ
『明日は朝から海で泳ごうって長谷川さんが言ってた。』
『はい。』
酔ってなんかいなかった。ただ またこんな風に作り笑いをする璃子を連れ出したかった。
『楽しみだな。』
俺だって気付いてない訳じゃなかった。
和希は何故だか璃子だけを避けている。
夏祭りの時だってそうだ。沙希と3人で花火を見たいだなんてワガママ言い出して俺たちを困らせた。
『ここからだと綺麗に見えるでしょうね。』
『そうだな。』
空がオレンジ色に替わり始めると大きな太陽が少しずつ地平線へと近づいていく。
俺たちは砂浜に流れ着いた大きな流木に腰かけて沈み始めた夕陽を眺めていた。
『おいで。』
璃子の頭を俺の肩に抱き寄せると甘い香りのする髪に唇を落とした。
『久しぶりだな 二人で夕陽眺めるの。』
『そうですね。』
璃子は俺の腹に手を回して肩先に頬を埋めた。
『私 少し酔ったみたいです。調子に乗りすぎちゃいました。』
また自分を責めるように言い聞かせる。璃子の悪い癖。
『あのなぁ…おまえは俺のカミさんなんだからもっと堂々としろ。』
『…。』
オレンジ色に染まり出した空に向かって俺は言葉を紡ぐ。
『俺はアイツ等の前じゃ我慢はしない。おまえと傍にいたいときは力ずくでも傍にいさせる。』
『ウフフ…そんなに威張らなくても。』
二人視線を合わせるとクスリと微笑みあった。
『同じ場所で同じ空を見上げられるんだ。俺の好きなようにする。』
『ジャイアン。』
『うるせぇ。』
顎をクイッと指先で上げると間髪入れずに甘い唇を奪う。
何度も角度を変えながら俺の思いを唇にのせて
『…誰かに見られちゃう。』
『俺に集中しろ。』
コイツは恥ずかしがって唇を外そうとするから 俺はさらに抱き寄せて璃子の唇を塞いで困らせる。
本当は甘え坊なくせに 甘え下手な俺の可愛い嫁さん
腹に廻っている璃子の手を掴むと薬指の輝きにキスを落とす
『はい おまえも。』
俺の薬指を差し出すと璃子はそっと口づけた。