続・あなたの色に染められて
第5章 サマーバカンス
まだほんの少しオレンジが残る空に波音が響きはじめると私たちは別荘に戻った。
京介さんはテーブルにつくと
『なんか軽いもの作ってくれる?』
回りを見渡せば眠くてグズるチーちゃんにまーくん。萌ちゃんは別室で授乳中…
こりゃ 私の出番かな。
好きに使っていいと言われたキッチンで 大きな冷蔵庫を開けるとそこにはたくさんの食材が納まっていた。
『何作ろうかなぁ。』
お昼はバーベキューだったからサッパリしたもので…ケンタくんたちは一緒に食べるかなぁ
いくつかの食材をピックアップして大きなアイランド型のキッチンの作業台に置くと いつものように包丁の音を奏で始めた。
『悪いな。やらせちゃって』
ビールを取りにきた京介さんが私の頭にポンと手を置いて
『いいえ みんな大変そうですから。』
京介さんは頭をもう一度ポンと叩くとワインボトルと缶ビールを手に後にした。
出来上がった料理をテーブルに運ぶと
『璃子ちゃーん。俺パスタが食べたいんだけど。』
手を上げて佑樹さんがリクエストする。
『はーい!了解でーす。』
さっきアンチョビがあったからそれで作ろうかなぁ
『キュウリのお新香は無理?』
『お新香は無理ですけど…浅漬けなら。』
私はそそくさとキッチンに戻って再び調理を始めると
『聞いたよ?』
『あっ…美紀。』
美紀は溜め息混じりに近づいてくると
『まったく今の子供はわからんね。』
冷蔵庫を開けながら呟いた。
私は何も言わず淡々と手を動かしていると
『まぁ これでも飲んで。』
『冷たぃ!』
美紀は缶ビールを私の頬に当てるとクスリと微笑んだ。
パスタのお湯を沸かしている間にキュウリを乱切りにして お塩と胡麻油で軽く絡めてと
『あっ そのオイル捨てないで。』
アンチョビの缶詰のオイルとニンニクのみじん切りをフライパンで弱火で炒めて パスタを茹でている鍋にアスパラを投入して
『アンタ本当に料理上手ね。』
『そう?美紀 その大皿取って。』
少しのゆで汁と一緒にパスタを絡めれば
…チン!
オーブンも音符を奏でる。
『すご~い!!』
『わぁ 美味しそう!』
テーブルに並べるとみんな一斉に手を伸ばす。それが嬉しかったんだけど
『アンチョビかぁ。子供には無理じゃない?』
ワイングラス片手に頬を染める沙希さんが苦笑いした。