続・あなたの色に染められて
第5章 サマーバカンス
…ったく
『取り合えず3ケース確保できたから走ってくれる?』
…ありえねえ
『先方には話はついてるから…あぁ…確保できたらまた連絡する。じゃ。』
もうみんな海を満喫してるっていうのに スマホ片手に俺は何をやってるんだって
『あっ もしもし…いつもお世話になっております森田酒造の森田ですけど…。』
営業部の若手が誤発注してしまった尻拭いを俺は潮風香る別荘で一人寂しくしていた。
『そうなんですよ あと2ケース足りなくて…。あっ あります?助かります!』
取引先にとにかく電話をしまくってやっと確保できたのは 一報を聞いてから一時間たった頃
『では うちの者を取りに行かせますので…。はい、よろしくお願いします。』
なんとか無事に乗り越えられたことを会社に連絡して
『よし!行くか!』
潮風に乗せて聞こえるアイツらの元へ急いで向かうと
『あのバカ…。』
俺たちが陣取る大きなテントの向こうから真っ白な素肌がキラリと光った。
『キャハハ!やったぁ!』
『美紀ちゃんと璃子ちゃんペアは強いなぁ。』
人影もまばらな浜辺でビーチバレーを楽しむ男女4名。
それを酒の肴に鼻の下を伸ばしながらビールを呑む後輩2名。
『マジでいい体だよな。』
『ホント あの白い肌に砂が付いてすげぇエロ…って痛っ!』
だから言ったろって
『うわぁ!きょ…京介さん!』
『人の嫁捕まえてエロいってなんだよ!』
食い入るように眺めていた奴等に一撃食らわして
テントでくつろぐ連中の間を縫うように浜出へ足を急がせ
『あっ 京介さん!』
ピョンピョン跳ねながら笑顔で手を振るコイツっていったいなんなんだろ…
『ちょっと 痛いですっ!』
無言で手首を掴みテントの中に引っ張りこみ
『なんですか 急に!痛いじゃないですか!』
口を尖らせブーブー言いはじめるコイツに 俺が着ていたTシャツを投げつけ
『着ろ。』
『なんでですか?』
周りの奴等はこの光景にクスクスと笑いだす。
『いいから着ろ。』
『え?どうして?』
ホントにわかってねぇんだな。
真っ白な素肌に黒いシンプルなホルダーネックのビキニがどれだけ男心を擽っているのか
それにダンナの俺だって今はじめて見たんだぞ?
『いいから早く着ろよ。』
『…なんで?』
首をかしげるおまえって…ホントなんなの?