続・あなたの色に染められて
第5章 サマーバカンス
お昼を食べ終わると京介さんたちは海に来てまでカラーボールを使って野球を始めた。
私たちはその光景を眺めながらテントの中でのんびりと過ごしていた。
『…寝ちゃったみたい。』
私の腕の中でさっきまで走り回っていたまーくんが寝息を立てると
『寝ると天使なんだけどね〜。』
美紀が汗ばんだ額をタオルで拭いながら目を細めた。
『そんなこと言って もう一人デキちゃったんじゃないですか?』
『萌ちゃん…忘れてよ。』
最近女として見てくれないと昨晩お風呂で肩を落としていたのに 二人で抜け出したことがバレて耳まで赤くする美紀に
『愛してもらえる相手がいるだけいいじゃない?私なんか寂しいもんよ?』
昨晩の失態を覚えていない沙希さんが大きな溜息をつく。
『沙希さんは再婚されないんですか?』
その話に乗っかるのは同じく授乳中であの席に居なかった萌ちゃん。
カラーバットを振って笑顔満点な和希くんを眺めながら
『あの子のためにお父さんは必要かなって思ってるけどね。』
そう言うと タイミングよくケンタくんと一緒にテントに戻ってきた。
『璃子ちゃ〜ん!』
『しーっ!』
私の腕の中ですやすやと寝息を立てる天使を目にすると口を手で覆って天使の寝顔を覗き込む。
『寝ちゃったの?』
汗の滲む額をそっとタオルで拭うと口をモグモグと動かす姿にケンタくんと私は目を細める。
『かわいいね。』
いつの間にかお兄さんとしての威厳を持ち始めたケンタくんはマシュマロみたいなホッペを優しく撫でた。
『プニプニだ。』
頬を緩ますケンタくんが後ろに控えていた和希くんに微笑むと
『いいなぁ…オレも弟ほしいなぁ。』
ボソッと呟いた。
その寂しげな表情を目にすると 同じ一人っ子としての気持ちがわかる気がする私は
『羨ましいよね。私も一人っ子だったからわかるなぁ。』
何も知らなかった幼い頃 母に兄弟がほしいと私もせがんで困らせたっけ
そんなことを思い出しながら顔を上げると和希くんは私に冷たい視線を向けて
『そんな風に思うなら俺たちにちょうだいよ。』
『…え…なにを?』
イヤな予感はしてた。だってずっと私にだけ冷たかったもんね。
『子供いないんでしょ?だったら京介兄ちゃんちょうだいよ。』
『和希!何言ってるの!』
遠くから何も知らない京介さんが和希くんを呼んでいた。