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続・あなたの色に染められて

第5章 サマーバカンス


『別れた方がいいってどういうこと?』

肩を抱いてくれていた手は私の頬を優しく撫で

『璃子はそうしたいの?』

寂しそうに微笑んだ。

『私には一緒にいれる資格がないの…。』

ちゃんと伝えなきゃ…。

彼のお嫁さんとして…酒蔵の若女将として隣にいる資格がないって

『俺といるのに資格いるの?』

京介さんは泣きじゃくる私と対照的にずっと微笑んで髪や頬を優しく触れてくれていた。

『私はダメですけど…沙希さんならその資格がありますから。』

なんでこんな風に遠回しに言葉を紡いでいるんだろう。

伝えてしまったらガッカリされるから?それならいらないって切られるから?

『俺の目を見て言ってごらん。』

目なんか見れないよ。

見たらやっと決心したのに心が揺らいでしまうじゃない。

『ごめんなさい。』

『だからなんで謝るんだよ。』

京介さんは大きな息を吐くとギュッと私を抱きしめてくれた。

『赤ちゃん…』

『赤ちゃん?』

顔を見られなくなったからかな。ずっと胸に溜まっていた言葉が溢れてきた。



『私…ダメみたいです。』

この小さな体を抱きしめるたびに守らなきゃいけないんだって思い知らされる。

『私じゃ京介さんの子供…抱かせてあげられないかもしれません。』

幸乃さんの言うとおりだ。それはおまえ一人が抱える問題じゃねぇよ。

『だから別れたほうがいいって?』

体を震わせながら躊躇うようにコクリと頷くと 俺は窓の外の海を眺めて体の力を抜いた。

『バカだなおまえは…。』

おまえは俺をなんだと思ってんだ?

『俺は璃子が居てくれればそれでいいんだよ。』

抱きしめても抱きしめても足りなくて

『そうはいきません。蔵だって継がなきゃいけませんし…。』

だから沙希と和希か…アホくさ。

俺は本当に面倒くさい女を嫁にしたもんだ。

璃子の体を引き離して瞳を覗き込む。

『聞こえなかったか?俺はおまえがいればいい。璃子との子じゃなかったらいらないよ。』

『京介さん…。』

『野球の神様に約束したろ?俺はどんなことがあってもおまえを離さないって。 』

俺が愛した女は後にも先にもおまえただ一人

『ったく…いい加減わかれよ。』

抱きしめた腕に力がこもる。

『って言うか 二人のことはちゃんと相談してくれよ。』

肩を震わせて涙を溢す璃子を優しく包み込んだ。

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