続・あなたの色に染められて
第5章 サマーバカンス
『マジか。』
頭を抱えるってこういうことなんだ。
確かに野球を教えてるときやあの夏祭りの日とかそんな雰囲気を感じたことはあったけど…
『厄介ですよね。』
『参ったな…。』
沙希になら面と向かって話せば蹴りはつけられると思ってた。
でも 和希が絡めば話は別になる。
幼いながらに父親を亡くし沙希と二人で必死に生きてきたんだ。
…それは無理です諦めてください。
純粋なだけにこんな簡単な言葉じゃすまされない。
『でも亡くなったのって確か3~4年前でしたよね?たった3年で新しいお父さんが欲しくなるもんですか?』
『そうだよな…普通なら思い出を優先するだろ?』
たしかにそうだよな。和希は学校に上がる前だったけどしっかり温もりを覚えているはず。
『和希はハッキリその…俺を親父にって言ったのか?』
『言いました「京介兄ちゃんは俺のこと好きだって、俺みたいな子がほしいって言ってた 」って。』
『なるほどね。』
そう言われれば聞かれたことはあった。
俺のこと好き?とか 俺みたいな子だったら野球もっと教えてくれた?だとか…
大人の俺からしてみれば当たり障りのない話だけど 和希からすれば俺の真意を探っていたことになるのかな
『和希くんの感じだと沙希さんの思いも汲んでるみたいでしたよ。ママもそうなったら良いって言ってたでしょ的な話もしてましたから。』
たくさんの想いが交差して複雑に絡み合っていた。
『ありがとう 沙希と話してみるよ。』
二人に礼を言って席を立とうとすると
『京介さん 隠し事しないでちゃんと璃子にも話してあげてくださいね。あの娘の傍にちゃんといてあげてくださいね。』
美紀ちゃんの瞳がまっすぐに俺に訴えかける。
『大丈夫。俺には璃子しかいないから。』
窓ガラスの向こうでケンタとちーちゃんと笑顔で台所に立つ璃子の姿を眺めた。
いつかあんな風に俺たちの子供と璃子の城であるキッチンでならんで料理することができるように俺が何をしなきゃいけないのか
和希にどうやって俺の気持ちを伝えるべきなのか…
もう一度キッチンに視線を向けるとその手前のソファからグラス片手に俺に手を振る沙希
俺は視線を反らすことしかできなかった。