続・あなたの色に染められて
第1章 Sweet life
『あら 今日は女将さんは?』
月一で集まる商工会の婦人部。
『用事があるそうで私一人で出席なんです。』
この婦人部 地元のお祭りや地域活性のイベントにと毎回議題は山盛りで
『璃子ちゃんがしっかりしてるから女将さんも安心して任せられるのね。』
『いえ 私なんかまだまだですから。』
少しでも早く馴れて お手伝いができるようにと毎回手帳を広げてペンを走らせて
『じゃあ 今年も森田酒造さんには樽酒と升を用意してもらう形で大丈夫かしら?』
『はい 升は1000個ですよね。』
今はちょうどの夏祭りの打ち合わせの真っ最中。
『それと 璃子ちゃんには本部で外国の方の通訳もお願いしちゃってるけど大丈夫?』
夏祭りの間はうちの酒蔵にもたくさんの外国のお客様が足を運んでくださるけど そこは風間くんにお任せして
『大丈夫です よろしくお願いします。』
お嫁さんとしての勤めをしっかり果たす私。
『次はパトロールの時間なんですけど…。』
次々に出される議題。さて 今日は何時までかかるのやら…。
***
『ただいま戻りました…ってもう誰もいないよね。』
時計を見上げればもう19時を過ぎていた。
『う~ん いい香り。』
パソコンを立ち上げてる間に少し濃いめのコーヒーを入れて
『さてと…残りの仕事 チャチャっとやっつけますか。』
のんびりなんかしてられない。
今日は京介さんが接待に出掛けてるから帰りはきっと午前様
その時間を利用して貯まりに貯まってしまった仕事をなんとか片付けなければ
まずはイタリアの商社に見積書をメールして
それが終わったら ロンドンのレストランから発注されたお酒の在庫を調べて
『Did the baggage arrive?』
ニューヨークのデパートに荷物が無事に届いたか確認の電話をしてと
『…ふぅ。』
やっと一息ついたのは時計の針が21時を少し回った頃だった。
『あれ…入ってないや。』
マグカップも空になってしまったその時
…ガチャ
『おっ やっぱり居たな。』
突然開いたドアからひょっこり顔を出したのは
『風間くん…どうしたの?』
Tシャツにデニムと もうすっかりプライベートモードの彼。
コンビニの袋をぶら下げながら私の隣にボスっと座ると
『夜食買ってきてやったぞ。』
その袋を私に押し付けた。