続・あなたの色に染められて
第6章 すれ違い
『竜兄どういうこと?』
京介さんは沙希さんの話を聞くと竜介兄さんの所にすっ飛んでいった。
『なんだよ うるせぇなぁ。』
お兄さんは昼休みを返上して出荷準備に追われているというのに京介さんはそんなことお構いなしに
『何で璃子がアイツのワイナリーの手伝いに行かなきゃならねぇんだよ。』
『あぁそれね。』
京介さんと対照的に冷静に瓶を一本ずつ丁寧に梱包しながら
『風間くんの所のシャトーで海外向けの試飲会をやるから そちらの酒も一緒に並べてみてはどうですかって向こうの社長からお誘い受けたんだよ。』
…すごい!向こうからわざわざ出向いてくれるなんてこんなチャンス滅多にない。
私はうんうんと頷きながら身を乗りだし心を踊らせるけど
『なら、営業部の俺が行く。』
腕を組んでお兄さんを見下ろすけど
『俺も最初はそう思ったよ? でもさぁ その日おまえ別件の出張と重なんだよ。』
っていうことは来週?
その出張は社長であるお父さんに同行する大切な取引先への挨拶で
『マジか。でも、それなら他の営業部のヤツに…。』
『おまえ話聞いてた?相手は外国人だよ?風間くんならうちの商品もわかってくれてるから璃子ちゃんと二人でいいお客さん捕まえてくれるだろ。』
そうだよね。風間くんと私だけなら業務にも差し支えないし それこそ経費だって浮く。
頭のいい京介さんもすぐにその事は気づくけど
『っていうか 何処泊まんの?アイツんち?』
それでも何とか阻止しようと頭を巡らせて問題点をつつくけど
『敷地内にプチホテルがあるんだって。その一部屋を自由に使ってくれって。』
さすが風間くん。抜かりがない。
項垂れるように椅子に座り込むと私の顔を見上げて
『おまえ行かねぇよなぁ?』
今度は泣き落とし?その尖った唇が可愛いいから「行かないよ」って言ってあげたいけど ここは酒蔵のためにと心を鬼にして
『仕事ですから。』
と 言葉を紡げば京介さんは大きな溜め息をついて頭を抱える。
『何日の予定?』
『一週間。』
『はぁ?一週間?』
さらに肩を落として溜め息をつく京介さん
『ほら 落ち込んでねぇで手伝えよ。おまえのお得意さんの分だぞ!』
手を休めることなく作業をするお兄さんと目が合うとお互い苦笑いして
私はお兄さんに頭を下げるのだった。