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続・あなたの色に染められて

第6章 すれ違い


『なぁ本当に行くのかよ。』

事務所に戻ったら平静を装い 営業会議でもいつもと変わらずまとめ役として振る舞っていたけど

『だってアイツと二人だろ?』

会議が終わり部屋を片付けていると壁に背を凭れかけ唇を尖らせ私の邪魔をする。

『酒蔵のためです。頑張ってこい!って送り出してくださいよ。』

発破をかけてもムスッとして

『風間が絡んでなきゃ俺だって快く送り出すっつうの。』

なんて 大きな溜め息をついて私をジロリと睨み付ける。

こういうときの京介さんは可愛い。

大きな体をして唇を尖らせてまるで調子にのって怒られた後のケンタくんのよう。

『あ~ オレ親父に出張行けなくなったって断ろうかなぁ。』

ほらね そんなこと出来るはずもないのに拗ねちゃって

『たった一週間ですよ?いい子に待っててください。』

拗ねる京介さんの横に並んで 頭をちょんと腕に凭れかけて ほんの少しだけど寄り添って

『私だって心配なんですよ?私がいないと世話好きな幼馴染みさんが 待ってました!って駆けつけるでしょうから。』

今度は私が唇を尖らせる番

『それは…。』

ほらね 否定できないでしょ?

『私だって心配なんですよ?』

わざとふざけた口調で瞳を見つめるけど不安なのはたぶん私のほう。

だって 夏の事件はまだ解決していない。

和希くんにきちんと話す前に沙希さんにかくにんしたけど 結局はぐらかされてしまい

ただ野球を教えてくれるっていうのに憧れてるだけ…ってうまく丸め込まれてしまった京介さん。

デリケートな問題だけに和希くんに直接聞くこともできず みんなの助言を聞きながら最善策を考えてはいるんだけど相手は子供。

やっぱりそんな簡単にはうまくいかないのが現状で

『ごめんな。』

そう言いながら優しく彼に抱きしめられると それ以上は何も言えなくなってしまう。

だから 私は彼の腕をくぐり抜け

『じゃあ はい!』

コーヒーカップが並んだお盆を手渡して

『パッと洗ってパパッと仕事終わらせて少しでも早く上がりましょ!』

このなんとも言えない雰囲気を打破するしかなく

『よし じゃあ俺が洗うからおまえは拭いてしまって。』

『了解です!』

お互いを信じて微笑み合うしかなかった。

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