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続・あなたの色に染められて

第6章 すれ違い


『ここにいたんだ。』

ブドウ畑が一望できる丘の上 キミは古びたベンチに座って沈み始めた夕陽を眺めていた。

『いい加減 電源入れてよ。』

キミは相変わらずスマホの電源を入れてくれない。

『探したっつうの。』

クスクスと笑うキミの横に腰掛けるとオレンジ色の大きな夕陽が視界いっぱいに広がった。

今日も京介さんは来なかった。

電話で話した感じから出張を終えたその足で血相変えて会いに来ると思ってたけど 今日で5日目。未だに京介さんは現れない。

キミはボクに頼ることなく昨日も今日も海外から来られたお客さんに一生懸命日本酒の良さをアピールして新規の顧客を獲得して

その度に酒蔵とメールでやり取りしてるけど京介さんが在籍してる営業部からの返事は味気ない事務的なのもの。

明後日には東京へ戻るボクたち。スマホの電源を入れていないとはいえこの場所はわかっているはずなのに

『夜飯食いにいかない?洒落てはいないけど老舗の旨いイタリアンのお店があるんだよ。』

顔を覗き込むように声をかけても

『ありがと でもホテルで食べる。』

こんなに毎日頑張っているのに困ったことにキミはほとんど食事を口にしていないみたいだね。

『ちゃんと食べないと明日の最終日は朝からお客さんが沢山来るよ?』

そう言っても首を横に振って

『大丈夫。ちゃんと食べてるから。』

と わざとらしく満面の笑みで微笑む

小さな体はさらに華奢になりその微笑みもボクにはかえって痛々しい

ゆっくりと沈んでいく太陽にキミは何を重ねているんだろう

『酒蔵に戻るのやめてここで働けば?』

なんてオレンジ色の光を浴びるキミに冗談ぽく提案してみても俯きながら首を振るだけで

キミが今何を考えて何をしたいのか…。酒蔵で席を並べていたときは手に取るようにわかったのに

今はこんなに近くにいるのに全然キミの心が読めない

キミの力になりたいと思っているのに空回りばかりする

『…ハァ。』

肩を落としわざとらしく大きな溜め息を吐くと

『ウソ…ついたことある?』

夕陽を見つめながらキミはポツリと呟いた。

『ウソ?そりゃ…ねぇ。』

まぁ…ついていないと言えばそれこそウソになってしまうけど

キミはその答えに悲しげに微笑んで

『じゃあ風間くんの彼女は幸せだね。』

そう言って髪をかきあげたキミはとても綺麗だった。

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