続・あなたの色に染められて
第6章 すれ違い
心に少しだけ風穴が開いたんだね。
キミはポツリポツリと言葉を紡ぎだした。
それは二人の馴れ初めって言うのかな…結婚するまでの話
初めてお付き合いした人と結ばれたらしいとは事務の子からは聞いていたボクはその話しに耳を疑い目を丸くし、時に溜め息をつきながら話を聞き入った。
元カノの話や記憶喪失で彼の手を自ら離してしまった後悔の話
微笑みながら話すキミはちゃんと想い出として胸に刻み込んでいた。
キミが『普通が一番』って言っていた本当の意味がわかったよ
キミたちは本当に苦難を乗り越えて結ばれたんだね。
それなのに…やっと二人の気持ちが通じあえて神様に誓ったというのに
『私は京介さんにしてもらってばっかりで…。』
このオレンジ色と紺色の闇のグラデーションする雄大な景色を見ながら自分を追い詰めて一筋の光を頬に伝わせる。
『そんなことないだろ?俺から見れば京介さんも十分に璃子ちゃんに甘えてると思うよ。』
なんて 恋敵の肩まで持ってしまうほどキミたちはやっぱりお似合いの夫婦で
『今回のことも帰ったらちゃんと京介さんから事情を聞かなきゃダメだよ。』
だなんて 自分がこんなにもお人好しだったのかと溜め息をつきながらキミを慰めているのに
『…ダメなの。』
キミはその言葉に首を振りポロポロと涙を流しはじめた。
『それがダメなんだろ?言いたいことは言わないと伝わらないし伝えてもらえないよ。繋ぎ止めるなら鞍えつかないと。』
いつも我慢してるキミの背中を押すことがボクの使命だなんて思い始めたりなんかしちゃって
でも キミはその使命感溢れるボクの瞳を見つめて
『京介さんはウソついてくれないの…。』
…どういこと?
普通ならそれは最高の誉め言葉だろうにキミはさっきと同じ台詞を吐いて
『ウソをつかないから「もういらない」って言われたら…私は京介さんと離れなきゃいけない…怖いの…彼を失うのが…怖いの。』
一度失った経験のあるキミは彼がいない時間を知ってるんだね。
『捨てられる瞬間までそばにいたいの…。』
その時間がとてつもなく怖くて苦しいことを…
ふと気づいたキミの後ろに見えるぬくもり
そのぬくもりが近づいてキミの頭をポンと叩くと
『おまえは本当に面倒くせぇなぁ。』
キミが待ちに待ったウソつきな王子さまが泣き虫なお姫さまを包み込んだ。