続・あなたの色に染められて
第6章 すれ違い
大きな瞳をさらに丸くさせ俺を見上げるその仕草が愛しかった。
『どうして?』
瞬きをすれば溜め込んだ涙が一気に溢れ必死に声を振り絞り肩を震わせながらスカートを握りしめる。
『誰が別れるって言った?』
席を立つ風間に頭を下げて 俺は空いたその場所に跨ぐように座り璃子を胸元に引き寄せた。
『ったく こんなに痩せて。』
こいつの涙の意味
さっきまでの風間との会話から どうやら兄貴と和希のことではなさそうで
『いきなり居なくなるなよ。』
胸に抱いてしまえば 力ずくでも連れて帰ろうなんて ここに来るまで立ててきた計画すべてがどうでもよくなる。
『っていうか 先に言っとくけど俺は何を言われても璃子を離すつもりはないからな。』
まるで宣戦布告のように胸を張って言いつけて
『京介さ…っ…』
また肩を震せてしまう。
あんなに照らしていたオレンジ色の大きな夕陽も山へ沈み 気がつけば満点の星空に輝く月明かりが俺たちを照らしてくれて
『寒っ…いつまでもここにいたら風邪引くぞ。』
目の前にブドウ畑が広がる丘の上は体の熱をあっという間に奪っていく
『ほら入れ。』
俺が着ているトレンチコートの中に引き寄せた。
襟元から顔を出すと真っ赤な瞳にへの字口
『…お仕事は?』
なんて どうでもいいことを聞いてきて
『おまえが必死で新規の顧客取ってくれてんのに 俺が事務所でのんびりしてるわけにはいかねぇだろ。』
山のようにあった今週分の仕事だってここに来るために全部終わらせてきたんだ…とは言わないけど
『璃子…オレの顔見て。』
重ねた額をグッと押し上げ無理やり視線を重ねる
『面倒くさいなら…来ることなかったのに。』
だなんて 無理して強がるおまえはマジで面倒くさい。
『おまえは面倒くさくていいの。』
これでいいのか?
『面倒くさいおまえじゃなきゃイヤなんだ。』
おまえが戻ってきてくれるなら何度でも言葉を紡ぐよ。
だって そうだろ?
離れてしまえば こんなに愛らしいコイツを抱きしめることさえ出来なくなってしまう。
『もう どこにも行くなって言ったろ?』
俺はもうおまえのいない人生なんて考えられない。
『俺を一人にしないでくれよ。』
なんて格好悪すぎるか…
『…京介さん。』
やっと背中に回った華奢な腕 頼むからもう離さないで