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黒子総受け短編集【黒子のバスケ】

第2章 壊れた少年を救う光は

黒子が学校から姿を消した。
俗に言う、不登校と言うものだ。

「これで平和になるね……良かったね、レミ」
「はいっ…ありがとう、赤司くん」

少し涙を見せつつ笑う霜北レミ。
和やかで穏やかな空気が流れていた。

………ただ一人、男の心中を除いては。

「………何か………」

何かが、可笑しい。
一人の少女を囲んで笑う、この状況も。
………ズクリと痛む、自分の胸も。

「黄瀬ェ?」
「……すみません、ちょっと」
「何処に行くんだ? 黄瀬」

青峰と赤司の声が降ってくるが、黄瀬の内心はそんな声に耳を貸すほど穏やかではなかった。

ダッ…
目を見開いて、黄瀬は走り出した。

「………何なのだよ、黄瀬は」
「あ、あのぉ…?」
「あー、ごめんねレミちんー
 この頃黄瀬ちん付き合い悪いみたいだから、そんだけだからさ~?」
「そうですかぁ…」

レミは内心ほくそ笑んで、そのまま彼らと談笑を続けた。










一方で、黄瀬涼太は焦っていた。

ずっと胸につかえていた不信感、その正体を悟った瞬間……
血がざわめいて、そして一気にそれが引いた。

あぁ、自分がしていたことは。
決して許されてはならないことだ、と。

最初から分かっているはずだったんだ。
黒子テツヤは何もしていない。
全ては彼女の、霜北レミの狂言だと。

だって、そうじゃないか。


あの事件以来、バスケ部マネージャーでも何でもない彼女が、自分達、キセキの世代に囲まれるようになった。

特に取り柄の有るわけでもない彼女。
あの事件がなければ、自分達はその存在すら知り得なかったような子。

そんな子が、今、自分達に…………?

それはない、有り得ないと。
だって、そうだろう?

一番の、本当に、決定打は______


「黒子っちが…するはずない!」


黄瀬は叫んで、黒子の家に向かって、いつもの通学路を疾走した。

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