テキストサイズ

修練の鏡と精霊の大地

第1章 黄昏時に出会して……

 すると……。



 お盆に置くように鏡の上に乗せた空き缶が、ズブズブと沈む様に鏡の中に潜りこんでいく。


「っ!!」


 驚きのあまり、球也は声を詰まらせた。


 マジックか?


 球也は鏡の下を覗きこむが、鏡の厚さは1センチほど。


 穴も何も開いてはいない。落ちている訳ではないようだ。


 正真正銘、鏡の中に入り込んでいる!?


 底無し沼にはまったかの様に、やがて空き缶は、跡形も無く鏡の中に吸い込まれてしまった。


 呆気にとられながら、球也はそれをただ黙って見ていた。


「ホッホッホ、驚いたか?」


 男性はかくしゃくな態度で笑った。


「な……なんなん?」


 球也は目を丸くする。


「今のは手品でも魔法でもない。これは異界への入り口を見せてやったんじゃよ」


「異界?」


「そう、あの空き缶は別の世界に行ったんじゃ」


 球也はその場を去って行った。


「こ……こらっ!! 若者!! まだ話は終わっとらんぞ!!」


 男性は球也を呼び止める。


 球也は一度足を止め、振り向きながら言った。


「そんな怪しい話、信用出来るわけないやん」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ