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修練の鏡と精霊の大地

第1章 黄昏時に出会して……

「あ……ご、ごめんなさい」


 注意を受けた球也は、急いでその缶を拾いに行った。


 男性はウンウンと頷き、球也の後ろ姿を眺めていた。


 球也は空き缶を拾い上げた。だが、これをどうすればいい?


 近くには、くずかごもない。


「こっちに持って来なさい」


 男性は手招きをして球也を呼び戻す。


 空き缶を片手に、球也はまた土手まで上ってきた。


「若いのう、息もきらしとらんわ」


 そう言うと、男性は左手を前に出した。


 球也は訳もわからず、ポカンとそれを見詰めていた。


「それを貸しなさい」


 男性がそう言うと、球也は「えっ!?」と声をもらし、一瞬、戸惑いながらも、今しがた拾ってきたコーヒーの空き缶を男性に手渡した。


 空き缶を受け取った男性は、右手を懐の中に入れた。


 すると、中から30センチほどの丸い鏡を出した。


 鏡を囲う、茶色の銅製の様な枠には、龍の型のような模様が彫られている。


 男性は水平に持った鏡の上に、その空き缶を乗せた。


 球也はただ、不思議そうにそれを眺めているだけだった。



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