テキストサイズ

修練の鏡と精霊の大地

第4章 穴

「おい!! ソーヤ!! あれってなんやねん!!」


 球也が燃え盛る炎を指差した。


<あいつ、ゼラチナスオイルキューブやねん>


「ゼラチナ……なんだ!!」


 ゴウゴウと音をたて、炎は四人を焙るように近寄ってくる。



<あいつ、全体が油の塊やねん。そんでもって肉食やさかい、なんぎなんや。火に弱いくせに、体に引火したら、それを武器にして迫ってきよる>


「じゃ、あれって氷じゃなくて、油の塊の怪物かよ!!」コウヤは後ろ歩きしながら、じわじわと迫る炎から避ける。


「じゃ、こいつで」と純化は水の精霊を出した。


「ちょっと!! 純化さん、ダメ!!」と莉子が止めた。


「なんで!? 早く消さなきゃ」


「いま、そこで水を巻いたら油を散らすことになって逆に危険だよ!! 天ぷら油に引火したとき水を入れないでしょ」


「じゃ、どうすんのさ!!」


<あの、あいつが燃え尽きるまで逃げるしかしゃあないわ>


 無色透明でただの物質だと思っていたが、生きた怪物等とは思えない。


 おそらく、本能だけで動いているのだろう。


「じゃ、あいつ引火してなかったらどうすればいいんだ?」とコウヤが盾で顔を被いながら言った。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ