テキストサイズ

修練の鏡と精霊の大地

第8章 カビと巨人

「大丈夫です。飲んでください」


 ユングがそう言うと、奈美は飛び付いて水を口にした。


「ぷはぁ〜」と奈美はご満悦の表情だ。


「よし、次はあたしだよ!!」と莉子も浴びるように水を飲む。


 続けて純化、コウヤ、球也も水を飲み、ユングも美味しそうに水を飲み続けた。


「ところで、これはずっと水が出たままなのか?」とコウヤが尋ねる。


 ユングは服の肩口で口を拭うと、手を横に振った。


「これはゆっくりと治癒していって、ちゃんと口を閉じます。ここ見たら前の切った跡があります」


 ユングが木の反対側を示した。


 人間の傷跡みたいに、横に切れ込みの跡が膨らんでいた。


「よく出来てる木だねぇ。感心するわ」


 莉子は感服した。


「あの小人の民族は、そういうのはよく知ってましたよ。いろんなこと教わりました」


 ユングはついさっきまでいた村のことを懐かしく思っていた。


「いいのか、出てきて……」コウヤが尋ねる。


 ユングは唇を一文字に結んだ。


「いいんです。俺も人間だ。みんなで役目を果たして帰りたい」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ