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修練の鏡と精霊の大地

第2章 物語の扉

 部屋のドアを開けると、弟はいなかった。


 6畳の部屋に、机が2つに二段ベッド。


 本棚には、マンガと野球の本が並ぶ。


 昔は兄弟でひとつの本棚だったのが、今は別々の本棚を使っている。


 部屋着の白いスウェットに着替えると、カバンから弁当箱を出す。


 いやでも親の顔を、見なければならない。


 ダイニングキッチンでは、母親の雛恵が夕食をテーブルに並べている所だった。


「ただいま」


 球也はそう言うと、キッチンテーブルの上に弁当箱を置いた。


「おかえり、部活どうだった?」


 さっそく来た。母親からの「どうだった?」が……。


「……調子いいよ」


「そう、頑張ってね。あ、優也は試験勉強で莉奈ちゃんと図書館に行ってるから、先に食べましょ」


「りな?」


「彼女らしいわよ。『同じ高校に行くんだ』って言って張り切ってる」


 中学三年で彼女……高校三年の自分はまだ女性の手は運動会のフォークダンスでしか握ったことないのに……。



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