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修練の鏡と精霊の大地

第2章 物語の扉

 夕食がはじまる。


 テーブルには肉と野菜の炒め物に、和え物、味噌汁が並ぶ。


 球蔵はテレビの野球を見ながら、ビールを片手に箸を動かす。


 読売臣人と関西タイガース。タイガースが、5点を取られて負けている。


「なにしとんのや……ガッと打ったらんかいボケッ!!」


 応援してるのか、けなしているのかがわからない。だが、明らかに機嫌が悪いのは確かだ。


「おい、球也」


 球蔵は正面にいる球也の顔を、ジッと見る。


 パンチパーマの様な癖毛の頭に強面の顔は、その手の者に間違えられるが、普通のサラリーマンだ。毛を伸ばせば、パパイヤというアダ名がつく。


「野球の方はどや? うまなったか? 前みたいなエラーして恥かかすんとちゃうで」


 昨日も同じ事を言われた。てか、ほぼ毎日だ。


  返事をせずに無言のままでいると、球蔵の態度が変わる。


『バンッ!!』


 勢いよくテーブルを叩く音が響く。


 皿の野菜が少し宙に浮き、味噌汁が波打つ。


「球也ぁっ!! お前、やる気あるんかい!!」


 例え、どんな返事をしようとも、ギャーギャー言われるのは見えている。



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