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修練の鏡と精霊の大地

第8章 カビと巨人

 やがて、人型化した粉は己の体を動かそうと、少しずつだが揺れはじめている。


「おい、ユング。あいつがワラワラか?」


 コウヤが聞いた。


「あれがワラワラです。あの型でしか見たことなかったから、まさかあんな形状から変化するなんて……」


 ユングはゴクリと唾を飲む。


「あいつは倒せないのか?」


「無理だ。あれはカビの塊。切っても叩いてもダメ。逆に胞子をばらまいて病原菌を植え付けていく」


「うわ……最悪じゃねぇか」


 コウヤは頭を抱えた。


「みんな! 手を貸して!!」と莉子が叫ぶ。


 純化の足が、ワラワラのカビに包まれていた。


「いやぁーーっ!! 助けて!!」


 純化は泣き叫ぶが、近付きようがなかった。


「莉子さん、離れて! さもないと、あんたもワラワラにやられちゃう」とユングが呼びかける。


「バカ言わないで!! 仲間だよ!! 見捨てられるわけないじゃない!」


「莉子さん……」


 純化の目から、喜びと悲しみと恐怖の感情が涙として溢れ出る。


「絶対に助けるから……」


 仲間としての絆が莉子の気持ちを動かしていた。


 もちろん、他のメンバーもその気持ちは充分に目覚めていた。


 だが、どう動いていいのかわからないという迷いが足を止めさせていた。



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