テキストサイズ

修練の鏡と精霊の大地

第8章 カビと巨人

 奈美は下唇を噛むと、泣く泣く弓矢を下に向けた。


 莉子が火の精霊を出した。他に手がない……何も出来ない自分に腹立たしさを感じていた。


 すでに精霊は人型に変化している。


<早く!! やつを燃やさんと純化はん喰われてしまうぅ!!>


 ワラワラは純化の頭に手をかけていた。


「くそっ!! このままじゃ……」


 コウヤが斧を手にした。


「コウヤさん、落ち着いて……武器による攻撃は危険です」


 ユングの忠告が鬱陶しく思えてくる。間違ってはいないが、危険であっても向かっていきたい気持ちでいっぱいだった。


「莉子さん、早く精霊を使わんと!! 逆に純化さんが危ないよ!!」


 ためらいが邪魔をして行動にうつせない莉子に、球也は煽るように急かす。


 莉子はグッと目をつむった。


「純化ぁーっ!! ごめんなさい!!」


 莉子は火の精霊を前に出した。


「お願い!! ワラワラを焼きはらって!」


 火の精霊は全身から猛烈な勢いで炎を噴き上げた。


 火は竜のようにうねりを上げ、暴れ狂うようにワラワラに突進していった。


 火は純化ごと包みこみ、音をたてて激しく燃え上がる。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ