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修練の鏡と精霊の大地

第8章 カビと巨人

 莉子は懐から袋を出すと、中のものをひとつ取り出した。


 なぜか、ねずみ色の石。


「おい、桃尻……それは石の精霊だ。動揺しすぎだろ」


「えっ!? あ……」


 コウヤに言われ、莉子はもうひとつの袋を出し、中から一粒取り出した。


 今度はちゃんとした薬だ。


 莉子は一粒、純化の口に入れた。


 そして、今度は水の精霊を出した。


 莉子はささやくように言った。


「純化の口の中に、飲める程度の水を出してあげて」


 莉子がそうお願いすると、精霊は小さな体で純化のアゴの上に立った。


『コポコポ……』


 純化の口から水が少し溢れ出た。


『ゴクッ』


 純化の喉が鳴った。


 薬を飲んだ音だ。


 薬の効果は早い。焼けた肌が再生し、みるみるうちに艶のある肌に戻った。


 さらに、焼けた髪の毛までが、元の長さに戻ったのだ。


 ユングと奈美は薬の効果に目を丸くしていた。


 すると……



「あぁーっ!?」



 どこからか声がした。


 一同が振り向くと、そこには20代後半と思われる、白いマントに身を包んだ男性が立っていた。


「なんてことを……なぜワラワラが……」


 男は燃えて息絶えたワラワラを見て、そう言った。



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