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修練の鏡と精霊の大地

第8章 カビと巨人

 奈美は球也の話を、歩きながらジッと聴いていた。


「あ……ごめんなぁ、急に変な話してもうて……なんか、この世界に来て、純化姉ちゃん、莉子さん、コウヤさんにずっと助けて貰ってて、何も出来ずにおったんやけど、アビラの水を汲んで、まずは純化姉ちゃんを助けたい。僕が一人やった時に、初めて一緒に旅をすることになった、同じ関西の人なんや。あの人おらんかったらいつまでも一人やった」


 奈美はウンウンと頷く。


 奈美はここに入ったことを、思い出していた。


 心に大きな深い傷を受け、ショックで言葉を失った奈美。気持ちを元通りにし、声を出して話したい。そんな希望を抱いて旅をする決心を決めた。


 だが、最初に訪れた村にいた格闘家の佐田勇樹に声をかけられる。だが、勇樹は無類の女好きだった。奈美が声を出せないことをいいことに何度も手を出してきた。もちろん、まだ中学生の奈美は激しく抵抗し3メートル以内には近付かなかった。


 仲間が増えると、勇樹のタイプの女がいたのか、その女といい関係になり、奈美は一緒に旅を続ける仲間ではなく、お荷物扱いとされたのだ。


 コウヤ達の仲間になってよかった。奈美は心の中でそう感じていた。



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