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修練の鏡と精霊の大地

第8章 カビと巨人

「あった!」


 ユングは見つけた。


 見つけたのは、大きく育った太い木だ。


 ユングは、アクロバットで鍛えた身軽な動きで、木に登った。


 人目を気にし、自ら見世物になることを決めて習得して身に付けた、アクロバットの技。


 ここで役立つとは思わなかった。


 ユングは木に登ると、巨人の目の高さの位置にきた。


「ほう、これがお前から見た目線か。羨ましいもんだ」


 木の上のユングに気が付いた巨人は、木に突進した。


 覆い被さるように木に体を預け、木もろともユングを焼き尽くすようだ。


 ユングは木にしがみつきギリギリまで誘き寄せる。


「来い来い来い……」


 早く逃げたい……火に包まれた巨大な人が、自分を襲うために近付いてくる。


 だが、これは己の力と根性を、己で確かめたかったために導いた試練。


 ギリギリまで逃げることは自分としても許せなかった。


 巨人は木にしがみつくユングに、平手を振り上げた。


 その大きな手が、熱い風をおこしながらユングに迫る。


「よしっ!!」


 ユングは木から飛び降りた。



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