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修練の鏡と精霊の大地

第9章 病

 コウヤは、二人が必ずアビラの水を採取してくるのを、信じていた。


 そして、ユングが戻ってくることを……。


 ユングは、あの小さな体で炎の巨人に、立ち向かっていったのだ。


 自分も負けてはいられない。


 だって、プロレスラーなんだから。


 今の自分なら元の世界に戻っても、大きな外国人レスラーと正面からぶつかっていけるような気がする。


 コウヤは目の前にいるワラワラを、肉体だけでぶっ飛ばすつもりだった。




 ……が。




「コウヤさぁーん!! 莉子さぁーん!! あの炎の巨人を倒しましたよぉーー!!」



 ユングだった。


 両足を引きずり、腕だけで匍匐前進してきた。


 ユングの声で、ワラワラが落ち着かなくなった。


 莉子とコウヤが、ユングに駆け寄った。


 莉子がユングの状態を見て言った。


「倒したの!? でも、あんた足が……」


「倒しました。これは俺にとって名誉なケガっすよ」


 コウヤがユングを見て言った。


「お前、いきなり大声出すんじゃねぇ!! ワラワラに気付かれたじゃねえか!!」



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