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修練の鏡と精霊の大地

第9章 病

 ワラワラは、コウヤの目の前に立っていた。


 コウヤは距離を取りながら、攻めるチャンスを窺っていた。


 だが、ワラワラは立ち止まったまま、襲いかかる様子などなかった。


 それも、まったく動く気配がないまま……。


 コウヤは頭をひねる。


「おい、どうした? かかってこいよカビ野郎!?」


 挑発するが、ワラワラはまったく動かない。


「どうなってんの?」


 莉子も訳がわからないといった表情を浮かべた。


 そのワラワラの様子にユングが言った。


「これ……ひょっとしたら……攻撃をしてこないんじゃないっすかねぇ?」


「え!? な……なんでだ?」とコウヤが聞いた。


「たしか……習性からして、こいつらは自分よりかなり強いと思った相手には、向かってこないという、臆病な面があるはず」


「て……ことは……俺が、かなり強いってことか?」


 コウヤは自分で言っておきながら、自分ではにかんでいた。


 だが、ワラワラはコウヤに対し腕を振り上げた。


「なにっ!?」


「コウヤさん! あれは攻撃です!! 気をつけて!」


「待てっ!! 話が違うだろ!!」



 何も違わないし、そんな話は誰もしていない。



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