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修練の鏡と精霊の大地

第2章 物語の扉

「優也、お前、いつ帰ってきた?」


「えっ? たった今」


「いま?」


 時間は午後11時。こんな遅くまで、中学生が何してやがる。


 親は何も注意しないのか?


 てか、親の目を盗んで帰ってきたのか?


 こんなやつに育つなんて、どんな家庭環境だ。


 親の顔が見てみたい……いや、今は見たくない。


 球也は高校生でありながら、世間をボヤく中年の様な物の見方になってきていた。


 枕元に置いたクッキーの袋から、フヮンと甘い香りが漂う。


 優也の彼女が、俺に? そんなわけない。


 優也はクッキーとかバームクーヘンとか、口がパッサパサになるものが苦手だ。


 いらねぇから俺にくれたんだろ。


 完全に差をつけられた感が、半端なかった。


 顔も似ていないし、兄弟との共通点は、名字と野球をやってることだけ。


 本当に血を分けた兄弟なのだろうか?


 母親、雛恵に正面から聞けないのが心苦しいし、口から飛び出るサプライズ発言が怖い。


 ふと、タクノアンの事を思い出した。



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