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修練の鏡と精霊の大地

第10章 老人と塔

「これじゃよ」


 男性は、全身茶色い毛で覆われた、小さい人型のようなものを手に乗せて示した。


「これは動物の精霊じゃ。こいつを持っているとな、彼ら怪物達の言葉を理解し、通じあえるんじゃ。だから、ワラワラのこともよくわかる」


「ど、動物の精霊!?」


 二人は目を丸くして、その精霊をじっと見た。


 男性は笑顔を見せ、ワラワラの体をさすった。


「こやつはカビじゃが、病原菌なんぞもっとらん。ただ、獲物を取るときに胞子を噴出するから、それを吸うとアレルギーとなるんじゃ」


「えっ!? でも、感染はするんだろ!? 現にうちの仲間が二人感染して……」とコウヤが言うと、男性はすぐに言葉を返した。


「感染なんぞするわけがない。まあ、妖精達の気管の構造は非常にデリケートなんじゃろう。だから少量の微粒子を吸い込んだだけで咳が出たり、きつい症状が出たり、呼吸困難が起こったりするんじゃ。人間さんは直接吸わなきゃ症状は出ない」


「なるほど、たしかに純化が襲われた時、一番近くにいたのは莉子だ。だから粒子を吸い込んで症状が出たのか」とコウヤは納得したが、莉子になんの症状が出てるのかわからなかった。


「そうじゃな。まあ、妖精達は空気が綺麗な所でしか住めないからのぅ」




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