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修練の鏡と精霊の大地

第10章 老人と塔

 コウヤが大きく頷いた。


「知っている。人の姿に擬態した、妖精の間では食用とされてるやつだろ」


「そうじゃ、こいつは主にブチブチを捕らえて食うておる」


「じゃあ、なんで姿形が似ている俺達は襲われないんだ?」


 コウヤの質問に対し、淀屋橋は動物の精霊に答えを委ねた。


 すると、ワラワラが口を開いた。


〈人間は襲わない。人間と妖精は匂いでわける。人間は自然の匂いがしない。妖精、ブチブチ、自然の匂い〉


「なるほど、匂いか……そうか、人間ていろんな薬やら飲んだり、シャンプーとか匂いのするものを使うからな」ユングはそう言うと、さりげなく自分の体を匂った。


「うむ、おそらくそれに違いない。さて、お二人さん、これからどうするのかね? あの塔に向かって精霊の大地に渡るのかね……」


 老人の問いかけに、二人は顔を見合わせた。


 薬の材料はあの塔にある。そこでアビラの水を手にいれてから、もう一度村まで戻り、薬を完成させ、純化と莉子を連れて戻らなければならない。


「よし」とコウヤが一呼吸してから頭を縦に振った。


「ユング、あの塔まで行ってこの話を二人に伝えてくれないか? 俺は一旦戻って桃尻娘と純化に今のことを伝える。それに、もうひとつ確認したいことがあるからな」



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