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修練の鏡と精霊の大地

第10章 老人と塔

「なんの音だ?」


 球也は周りを見回す。


 すると、今まであった大きな壁が一気に地面に沈み出した。


「うわっ!! スゲェッ!!」


 初めて見た大仕掛けに目を丸くする。


 地鳴りのように響く音に全身を震わし、壁が完全に無くなるまでただ立ちすくんでいた。


「結構この仕組みってすごいんちゃうの? ゲームでもなんか、こんな塔には驚くような仕掛けがあったりするんだよな」


 壁がなくなると、奥に上の階に続く階段が現れた。


「あれか……あれを登ってけばいいんだな」


 球也は重い袋を抱え、階段まで向かった。


『カチャンカチャンカチャンカチャン』


 奈美がスロットマシンを指差した。


「もういいから先に行こう。なんとか変動ってのが起こってるんだと思う……換金出来ないから増えても困るんだよね」


 球也は階段を指差して、奈美に促した。


 球也は一段ずつ階段を上がる。中が暑いのか、それともコインの袋が重いのか、球也の額から汗がにじむ。


 フッと一瞬、軽くなったような気がした。



 奈美が後ろからコインの袋を持ち上げていた。


「あ、奈美ちゃん……ごめんなぁ……助かるわ」


 奈美の優しさに少し照れ笑いを見せた。



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