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修練の鏡と精霊の大地

第10章 老人と塔

 なぜか球也は大きく深呼吸をしている。


『ダメダメ……理性理性』


 スポーツマンとして、必死に自分を抑えていた。


 奈美は下までくると、球也の正面に立った。


「僕の身長でもとどかんのかなぁ」


 そう言って今度は球也が、急ぐように階段を上がった。


 本当は、恥ずかしくて、奈美の顔が見れなくなったからだ。球也の目には、白と黄色のしましまのパンツが焼き付いてしまっていた。


 コインの入った重い腰袋がズッシリと身に食い込む。


 力を入れ、一段一段ゆっくりと上がる。


 奈美がまた後ろから、球也の腰袋を持ち上げる。


「あっ!! 奈美ちゃん、ごめんなぁ」


 口ではそう言っているが、心の中では……


『ひょっとしたら、奈美ちゃん、俺に気があるんちゃうか?』と思っていた。


 すると……


『ゴゴゴゴゴゴ……』


 この階でもゴゴゴ音が鳴った。


「えっ!? 今度はなんや!?」


 球也はキョロキョロと見回す。


 奈美はジッと佇んでいた。


 やがて、足元からグラグラと小さな地震のような揺れを感じた。



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