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修練の鏡と精霊の大地

第10章 老人と塔

 球也とソーヤが喋っている間、奈美はジッと、その大きな箱を眺めていた。


「!?」


 奈美は何か異変を感じた。窓がないこの空間に、風を感じたのだ。


 キョロキョロと辺りを見る。どこかにすきま風が来るような所はないのかと……。


 だが、その答えは目の前にあった。


 球也が握る取っ手のついた大きな箱。


 漫才に夢中になっている球也は気が付いていないが、わずかに箱が動いていた。フタと思われる取っ手のついたそれが、動くたびに風がくる。


 奈美はその箱に微かな危険を感じた。


 あわててメモ帳とペンを出した。


「よし、先を急ぐから、さっさとこれ開けて上に行こ」


 そう言って球也は取っ手を両手で掴んだ。


 奈美はその箱の奥から、鋭い殺気を感じ取った。


『それを開けちゃダメ!』


 心では叫ぶが、声が出ない。


 球也が勢いよく、フタを開けようとする。


 開ける寸前にソーヤが言った。


<あ、ちなみにそん中、なんかおるで>


 時すでに遅し。


 球也は次の階の希望を願い、おもいっきりフタを開けた。



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