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修練の鏡と精霊の大地

第10章 老人と塔

 中から突風が吹き出した。


 かなり強い風だ。


 奈美は恐怖にひきつった表情を見せ、球也は笑顔とドヤ顔を足したような表情を見せた。


 ソーヤは<遅かった>と言わんばかりに、すごすごと球也の懐にもぐり込んでしまった。


 箱の中からは、竜巻をまとった巨大なライオンが現れた。


 球也の顔から、笑顔が消えた。


「階段じゃないね……怪獣!?」


 状況を把握するまでほんの数秒間、後悔と言う一言がドッと押し寄せてきた。


 金色のボディーに赤いたてがみ。全長は4メートルはあろうか? 顔はライオンと言うか熊に近い。四足歩行で全身に風の渦をまとっている。口から、はみ出るほどの長いキバからよだれを垂らし、今まで来なかった獲物を久しぶりに見たのか、ジッと鋭い眼光を飛ばしていた。


 その目の先にいるのは奈美だった。


 強い風が奈美に向かって吹いた。


 その風で奈美の持っていた、メモ帳とペンが飛ばされてしまった。


「!!」


 メモ帳とペンは口のきけない奈美が唯一、人に気持ちを伝える手段のひとつ。


 なにもないこの世界では一番大切なものだ。



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