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修練の鏡と精霊の大地

第2章 物語の扉

「うわぁっ!!」


 その時、球也は水の中にいた。


 だが、水の中にいるのも束の間だった。


 勢いよく腕を引っ張られ、水しぶきをたてて水面に持ち上げられた。


 球也の目に映ったものは、自分の周りを囲む沢山の人々と、自分の腕を掴んで引き上げようする数人の男だった。


「うぉーー、泉の勇者様じゃーーっ!!」


「ついに、ついに現れたぞっ!!」


 なぜか歓声が上がる。


 意味がわからない球也はゆっくりと陸に上げられると、何が起こったのかも理解出来ず、その場でへたりこんだ。


「勇者様だ!!」


 小さな女の子が物珍しそうに近寄ってきた。


「あっ……」


 球也を声を上げた。部屋で鏡を覗いた時に手を振ってくれた女の子だ。


「来てくれたんだね。助けにきてくれたんだね」


「へっ? 助ける?」


 すると、一人の老男性が近寄ってきた。


 太い杖を片手に腰を曲げ、目と口が隠れるほどの白い眉毛とヒゲ。全身に大きな茶色いポンチョのようなものを纏(まと)っている。


「ようこそ、フェアリー王国へ、お待ちしてましたぞ勇者様」


「ゆ……ゆうしゃ!?」


 球也は座ったまま天を仰いだ。



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