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修練の鏡と精霊の大地

第11章 現実世界と大仕掛けの間

 その頃、ユングは巨大な鳥の巣の上で、寝そべっていた。


 夜空には無数の星が輝いていた。


 この世界にきて、一人で迎える初めての夜だった。


 自分の体がコンプレックスで、なんとかなるかもと言う希望でこの世界に飛び込んできた。


 だが、実際は望みどころか、変な冒険を強要させられ、旅を続けた。


 やがて小人ばかりが暮らす村にたどり着き、人間ながらその村に住むことを一度は決意した。だが、自分は人間。肌の違いを感じ、自分の中に違和感を感じた。


 そこに訪れたコウヤ達に、なにか心を動かされるものがあった。


 もう一度、人間として旅を続け、元の世界に帰ろう。それまでなにがあっても全力で前を向き、つき進んでやる。


 だから、自分よりはるかに大きな巨人に立ち向かえた。


 人間の世界には、いま、自分はいない。つまり、死んだも同然だ。


 生き返ってやる。そして、自分を見て笑った者を見返してやる。


 ユングという名前から、一度は捨てた本名の藤山輝に戻る。


「この空は人間の世界にも見えているんだろうか? 俺はここにいるぜ」



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