テキストサイズ

修練の鏡と精霊の大地

第11章 現実世界と大仕掛けの間

 サルのように身軽な動きで木を降りると、辺りをキョロキョロと見渡した。


「来た方向は向こうだったから、あっちか」


 自分が来た方の景色を覚えていたユングは、球也と奈美がいる青空の塔に向かうことにした。


「コウヤさん、大丈夫かな……なにかに気がついたようだけど。とりあえず俺は二人の元に急ごう」


 ユングは走った。


 まだ辺りは暗い。だが、月の明かりだけで充分だった。


 体が小さいという劣等感。ここに来た理由がそれだった。プライドを捨て自らを見せ物の武器とした。


 だが、自分よりも背の高い子供から「かわいい〜」と言われ、頭を撫でられるのだけは我慢ができなかった。


 俺をバカにしたお前達はこんなことが出来るのか!!


 この世界に来て自信をつけた。


 後は仲間達と元の世界に帰るのみ。


 早く帰ろう。そのために早く終わらせよう。そのために……早く走ろう。







 現代に戻る。



 莉子の電話番号を聞いたコウヤは、さっそく携帯電話でかけた。


『プルルルル、プルルルル』


 呼び出し音が鳴る。


 コウヤはなぜか、少し緊張していた。


 ついさっきまで、一緒に旅をしていた相手。だけど、今は、夢だと思っていた相手からの電話。


 はたして相手は本当に、莉子本人なのだろうか?




ストーリーメニュー

TOPTOPへ