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修練の鏡と精霊の大地

第11章 現実世界と大仕掛けの間

 ゴクリと唾を飲んで、球也が奈美の前に立った。


「あ、あのさ……むやみに……矢を放つってどうかな?」とやや声を震わせながら言った。


「……」


 奈美は急に表情がゆるみ、俯いてしまった。


 話すことが出来ない。


 メモもなければペンもない。


「いや、あの、責めてるんやないねんで。ただ、正体もわからんうちにやるのは、どうかなと」


 ゆるんだ表情を見た球也は、少し態度を変えてみた。


「あ……う……」


 奈美は手話を試みるが、もちろん球也には伝わらない。


<きっと、危ない怪物やと思ったんちゃうか?>


 ソーヤが奈美の心境を、察したかのように言った。


「あ、そうなんや!! そうやね、そうやね、アハハハ」


 球也はソーヤに合わせた。


 そうするしか、なかった。


 球也は少し考えてから言った。


「奈美ちゃん、書くものが無いから、僕らが奈美ちゃんの声を感じとるってのは、なんとも出来ないんやけど……奈美ちゃんは僕らの言ってることは聴こえるから、頷くか、顔を横に振るか、わかりやすいジェスチャーで応えてみるってのはどう?」と球也は提案した。



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