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修練の鏡と精霊の大地

第13章 橋の上の攻防

 奈美は振り返った。


 勇樹は大きく息を吸った。


「まだ、先は見えてこないかぁーーっ!!」と大声で言った。


 声は届いたのか、奈美はウンウンと頷いた。


「うん、この先は……」


 奈美は普通の声で返した。


「な、なんて言った? 聴こえない」


 勇樹のいる距離からだと、聴きにくい。


「なぁ、球也くん、あいつ、なんて言った?」


 球也は返す。


「ウンコしたいって言ってました」


「な、なに!?」



 こんな状況で大便がしたいなどと、よく呑気に言えるものだ。


 ひょっとして奈美は、自分よりも度胸があるのでは?


 勇樹はこの橋を渡ることに、恐れを感じている自分を恥ずかしく思った。


「おーい!! なぁーみぃー! もう少し我慢しろよーー!!」


 後ろから声を張り上げて、奈美に伝えた。


 奈美はツンとした態度を見せた。


「うっさい! あんた、嫌い」


 またも、聞き取りにくい。


「おーい、球也くん、やつはなんて言った?」


「うるち米、あんかけ大豆……」


「飯……か?」



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