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修練の鏡と精霊の大地

第13章 橋の上の攻防

 球也も足早に進む。


「奈美ちゃーん」と声をかける。


 奈美は足を止め、振り向いた。


「これ、佐田さんから」


 球也は勇樹から受け取った袋を差し出した。


「えっ? これ、なんですか?」


 奈美は袋を受け取ると、中身を確かめた。


 なにかを包んでいるような、分厚い植物の皮が出てきた。


「なにこれ?」


「なんか、おにぎりらしいわ。さっき、うるち米がどうとか言うてたから、お腹空いたんやと思ったんちゃう?」


 奈美は「えっ?」というような表情になった。


 この状況で言った覚えがないのに、なぜうるち米が出るのだろう?


「私、あの人キライ……」とムスっとした顔になった。


「えっ? どうしてさ?」


「すっごい、変態でやらしいんだもん。なんか、思い出したくない」


「あ、そう言えば最初、あの人と一緒に行動してた言うてたもんなぁ。そっかぁ……」


 球也は奈美が勇樹になにをされたのかが気になったが、さすがに聞くに聞けなかった。


 それから三十分ほどの時間が流れる。


 どれだけ歩いたのか?


 後ろを向いても、もう塔は見えない。


 もう、戻る訳にはいかない。



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