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修練の鏡と精霊の大地

第13章 橋の上の攻防

「礼を言うなら、前にいる奈美に言ってやれ」


 勇樹は20メートルほど先にいる、奈美を指差した。


 奈美は仰向けになり、肘をたてて、上半身を起こしていた。


「あの子が矢を射って、あのバケモンを落としたんだ」


「そうなんっ!?」と球也は奈美に目を向けた。


 奈美の手にはでしっかりと、弓が握られていた。


 球也に向かっていく翼竜の姿を見た奈美は、反射的に矢を放ったのだ。


 みごと、矢は翼竜の首に命中。翼竜はバランスを崩し、橋の上に落ちた。


 その衝撃により、音と共に、橋が大きく揺れた。


 翼竜はそのまま落下。


 そして、揺れた勢いで滑り落ちそうになった球也を、勇樹が持っていた樹木の精霊が救った。


「お前、あの状況の中でよく耐えたな……奈美もよく判断してやったよ」と勇樹は苦笑いしながら言った。


「俺、もう帰りたいっすよ……この旅の中で、今がめっちゃ怖かった。絶対、寿命縮んでますわ」


 球也はそう言ったあと、奈美に向かって手を振った。


「ありがとう! ほんまにありがとう!!」


 奈美は安心した表情で、ピースサインをした。


 自分でも突然の行動だったようだ。


 まだドキドキしているのか、大きく息をしながら胸を押さえていた。



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