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修練の鏡と精霊の大地

第13章 橋の上の攻防

 球也が振り向いた。


「落ち着きましょう、奈美ちゃんに、責任ないですやん。なんにも悪いことしてませんやん。責めるのはやめましょ」


「お前は黙っとけ!! 奈美に言ってんだよ!!」


 勇樹の中で、空の高さほどある、透明な橋の上に立っているという恐怖は、イライラによって掻き消されていた。


 そして、そのイライラは球也にも向けられていた。


 さらに、勇樹が抱いていた恐怖は、奈美の心に植え付けられた。


「おい、今度は前にいるお前が足場を探して進め。俺達を安全に導けよ」


 勇樹は憎しみが沸き上がるような笑みを浮かべ、上から見下ろすように言った。


「まった、奈美ちゃん、また四つん這いになって少しずつ進もう……立って歩くのは危険だから」


「立って歩く方が早い。こんな直射日光の真下で、トロトロしてる時間はない。俺はこんな所で、カラカラになって死ぬつもりはない。さぁ、奈美。お前が先頭に立ってんだから、しっかりと、安全に導いてくれよな」


 どう考えても無理な要求だ。


「佐田さん、ちょっと落ち着いてくださいって……じゃ、佐田さんはここから先頭に立って、来た道戻れますか? 佐田さん、出来るんやったら、見本見せて下さい。奈美ちゃんより経験豊富ちゃいますの?」


 球也は少し、低姿勢に言ったつもりだった。だが、奈美をかばうあまり、やや挑発的になった。



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