テキストサイズ

修練の鏡と精霊の大地

第2章 物語の扉

 球也は物珍しそうに、器に入った液体を見る。


 入っているのは、茶色い液体だ。まだ熱いのか、白い湯気がたっている。


 ヌカーはその器を指差して言った。


「それは、勇者様の世界で言うお茶の様なもんです。どうぞ冷めないうちに」


 球也が器に手を伸ばす。ほのかに温かいものが伝わってくる。


 中は少しとろみのある、コーンスープの様な濃度がある。


 球也は恐る恐る口をつける。


「アチ!!」


 入れたてで、まだ熱さはあるものの、口の中に少し甘さが広がる。


「あれ? なんか飲んだことある味だ」


「なにかわかりますかな?」とヌカーは問う。


 球也は何度も息を吹きかけ、少し冷めたところで、口をつける。記憶していた味のデータから、当てはまる物が出た。


「これって……お汁粉?」


 味は薄く甘さは控えめだが、その風味はまさしくお汁粉だった。


 ヌカーはその器を示して言った。


「それは、お汁粉を葛で溶いたものじゃよ」


「やっぱり!!」


 こんな世界でお汁粉が飲めるなんて、思ってもみなかった。


「人間の世界にある植物のほとんどが、このフェアリー王国から生きているものばかりじゃよ」


「えっ!?」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ