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修練の鏡と精霊の大地

第13章 橋の上の攻防

 やつは本気で来る。


 直感でそう受け止めた。


 奈美は矢をグッと引いた。


『こいつ……俺に対してなら、間違いなく矢を放つ!』


 勇樹はそう思った。


 その時、ふと、我にかえった。


 球也を橋の真ん中に引き寄せると、その手をはなした。


「ダメだ……暑くてイライラしてた……悪いな。行ける所まで頑張ろう」


 正気を取り戻した。


 球也は涙目でアゴをおさえていた。


「ひ、ヒドイよ佐田さぁ〜ん」


「すまんな……俺はイライラすると感情が暴力的になるんだよ……人間として、まだまだ成長してねぇんだろうな」


 球也の肩を軽くポンポンと叩くと、頭を深々と下げて謝罪した。


 チラリと、奈美の方に目を向けた。


 奈美はまた、矢をこちらに向けていた。


「お、おいっ!! もう、いいだろう! いい加減、それをおろせ」


 奈美はその言葉に、頭を縦には振らなかった。


 それどころか、よけいに矢を後ろに引いた。


「待て……落ち着け……」


「球也さんがそう言った時、あなたはすぐに手をはなさなかった!!」



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