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修練の鏡と精霊の大地

第13章 橋の上の攻防

 奈美はそう言って、もう一度、矢の照準を合わせた。


「それは、俺もどうかしていたんだ。この暑さだ。精神的にも支障をきたすこともあるだろう。球也には後で、十分に詫びるつもりだ」


「それだけじゃない。あの時、私もそんな気持ちで泣いてたのに、止めようとしなかった。私が喋れないのをいいことに、襲ってきた。この心の傷、トラウマはずっと残ってる! 忘れたなんて言わさない。この思いを消し去るには、これを射るしかない!!」


 奈美の怒りの行動により、形勢が逆転した。


 勇樹は奈美の放つ弓矢の、的確な照準の、確率の高さをよく知っていた。


 しかも、自分達のグループにいた頃、勇樹は奈美に対してある猥褻な行為を仲間が眠りについたころ、行っていた。


 そう、奈美の言うあの時とは、このことだった。


「まて、たしかに襲ったのは事実だが……お前の体は一切傷付けてない!」


「あんたの女が起きたからでしょ!! もし、あの人が起きなかったらと思うと……」


 奈美の手がピタリと止まった。


 狙いを定めたのか、眼光が鋭く光る。




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